まず、大局を知り、のちに、細部を知る
池谷裕二『記憶力を強くする』によると、オペラント条件付けで、ネズミに違いの小さなものを学習させるには、まず大きなものを学習させる必要があるという。
記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
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そして、池谷先生が推薦する『脳が認める勉強法』の著者、ベネディクト・キャリーは、まず、大きな仕事に取り掛かってから、小さな仕事を行うようにしている、といっている。
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このベネディクト・キャリーのやり方は、オペラント条件付けで、細かいことをネズミに学習させる方法と合わせて、理解することができると思う。
つまり、まず、大きな仕事にとりかかり、その大局をとらえておくことで、のちに大きな仕事の小さな部分の理解が、容易になるという効果があるはずである。
まず、大きな仕事にとりかって、その後、中断して、小さな仕事を行うと、最初の着手段階では、大きな仕事の細かい部分は理解できないだろうが、小さな仕事を行っている間に、レミニセンスや、孵化などの、『脳が認める勉強法』で紹介される他の作用も働いて、無意識に理解が進み、再び大きな仕事に戻ったとき、細部への理解が簡単にできることとなる。
逆に、簡単にできる小さな仕事の処理から始めて、あとで、まとめて大きな仕事を処理しようとすると、全体と細部の理解を同時に行わなければならず、困難さが増すのである。
これは、『脳が認める勉強法』で、最も効果的な勉強法と位置付けられている、分散学習が、なぜそんなに効果的なのかを考えるためにも、有効な考え方の一つだと思う。
つまり、最初の学習で大きくつかむことで、二度目、三度目の学習で、細部の理解が深くなる効果がある。そして、『記憶力を強くする』にあるように、理解できたことは、記憶に残りやすいのである。
このような考え方は、精神衛生上も、役にたつ。
つまり、着手してすぐ、大きな項目を、集中して処理するぞ、と意気込むのではなく、まずはできなくても、とりあえざっとずやってみるか、というくらいの軽い気持ちで、始めるので、取り組む際のストレスが少ない。
ストレスが少なく、効果も、集中してやるより出るというのだから、悪いところが見当たらない、非常に有用な、勉強法、作業法である。要は、急がばまわれ、ということだ。
というか、上記のオペラント条件付けの実験をみると、集中して、いっきに細部まで理解して処理することは、不可能なのであり、ここでのストレスは、不可能なことをやろうとするストレスであり、まったくの無駄である。
このように、何ができ、何ができないかを、知ることは、不要なストレスを減らす、よい方法である。
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